沿岸漁業
定置網漁
先人の知恵を受け継ぐ「待ちの漁」。
季節によって獲れる魚の種類はさまざま
■ この漁の漁獲量が多い地域
北海道・岩手県・宮城県・石川県・長崎県・富山県・神奈川県・千葉県・高知県・京都府(北海道はサケ定置が中心)
■ 主な魚種
【北海道】サケ、ニシン、タラ、ホッケ、カレイ
【東北】アイナメ、ボラ、アナゴ、クロダイ、スズキ、ヒラメ
【北陸】タイ、コノシロ、サヨリ、チダイ、スズキ、ハタハタ、ブリ、メバル
【近畿】チヌ(クロダイ)、ツナシ(コノシロ)、セイゴ、イサキ、シマアジ、コロダイ
【四国・九州】イカ、ツナシ、スズキ、チヌ、ボラ、アゴ(トビウオ)、ヒラメ、ブリ
沿岸から30分〜1時間程度の場所に、魚種や潮の流れを読んで網を設置。
季節ごとにどんな魚がどこで獲れるかという情報、狙う魚の習性や沿岸の潮の流れなど、先人漁師たちが蓄積してきた独自のノウハウによって網を海底に設置する。漁場は陸から2〜5キロ離れた場所、船で30分程度の範囲が中心。獲れる魚の種類は地域や季節によってさまざまだが、全国の定置網にはブリ、イワシ、アジ、サバ、カワハギ、サヨリ、イカなどをはじめ何百種にもおよぶ魚介類が入る。時には予想以上の大群が網に入ることや、マグロなどの大物が獲れることもあり、海の恵みと収獲の喜びを強く体感できる漁だ。
乗組員6〜15人、何隻かで船団を組むこともある。
未経験者でも就業しやすい。
漁師の感慨、そして気骨と腕の見せどころ。
定置網漁は、沿岸を回遊する魚をさえぎる「垣網」と、それに沿って誘導された魚が入る「身網(袋網)」を設置して魚を獲る。大型の漁船で魚を追って大量に獲るのとは対照的に、魚の動きそのものを読む漁法のため「待ちの漁」とも言われてきた。自然への回帰や資源の大切さが見直されている近年では、魚を根こそぎ獲ることのない資源管理型漁業あるいは省エネ漁業として再び脚光を浴び始めている。
出港はおおむね未明ごろ。漁場に仕掛けた「身網」に入った魚を船内に取り込む。この「網起こし」と呼ばれる作業におおよそ1〜2時間かかる。もっとも人手が必要な作業で、新人漁師にとってやりがいを感じられる瞬間といえる。
未明に出港、収獲〜選別作業の後、昼頃には仕事が終わる日が多い。
漁場でふたたび網を仕掛けた後、市場のある港へ向かう。
その日の成果次第だが、明け方には帰港し、水揚と魚の選別、船の掃除などをすると一日の仕事が終了する。船の機関や設備の修理、網の補修などの作業が長引くことがなければ、午後からは自由時間となる日が多い。現場で体力、集中力、緊張感などが要求されるのは当然だが、自分の時間をしっかり持つことができる。通勤型の就労をする人も多い。船主や船頭を目指し、さらに安定した水揚を実現するためには、季節ごとの漁場の変化や魚種ごとの習性の研究心や幅広い情報収集力が必要になってくる。
定置網漁の仕事サイクル
網は幅60メートル、長さが270メートル前後のサイズが中心。直線に伸びた「垣網」が回遊する魚の行く手をさえぎり、主体の「身網」に誘い込む。 さまざまな種類の鮮度の高い魚を食卓に届ける、環境にやさしい漁法だ。
未明、早朝に集合して出港
(網のある場所まではおおむね30分程度)
網起こしと再設置
1時間程度の収獲作業。
(船上で網の修繕などをする場合もある)
帰港/水揚げと選別作業
午前中にすべての作業が終わる場合が多い
(定休や時化の日の休漁など、自由時間が比較的豊富)