漁業就労フォーラム開催と表彰について

こんにちは!漁師.jp馬上です。

2025年2月6日から二日間、雪の函館少年刑務所において【漁業就労フォーラム】を開催しました。
その際、漁師.jpのこれまでの取り組みについて函館少年刑務所長より表彰いただきました。

2015年に法務省より「出所者の再犯防止の取り組み」として各省庁に呼びかけがあり、水産庁を通じこちらにも受刑者の雇用について検討できないかという話がありました。

それまで出所者の雇用について、考えたこともなくどうしていくのが良いのか悩ましく思いました。
法務省の説明では出所者の再犯率は、職に就いていない者は有職者の3倍とのこと。
犯罪のない国であって欲しいことはみな同じですが、自分の会社や地域に受刑者を受け入れること、船という特殊な環境を考えると、先頭を切って進めることにためらいがあります。

ただ、ここで私たちがお断りしてしまう話でもない。

法務省との話の中で、函館少年刑務所は職業訓練をするためのいかつり船少年北海丸(99t)を所有していることを初めて知りました。
そこでは毎年5~6級海技士学科合格を目指し訓練をしている受刑者が10人前後いるそう。
「もしかしたら大型船の船主さんの中にはこうした方を雇用したいという方もいるのではないか」
そんな思いで業界団体に函館少年刑務所で漁業講話をすることを呼びかけました。
予想通り賛否両論です。
というより否定的な声の方が多かったように記憶しています。
「受刑者を乗せているという話が外にでたら、業界の評判が悪くなる。」
「もし船で犯罪が起きたら責任を取れない。」
こうした声が出ることもすごく理解できます。

これを会長に伝えたところこう言われました。

「出所者というのは服役を終えたら一般人と同じだ。何も差別することはない。 こうした人の就労の機会を作るのも我々の役目だ。」
「まずはいかつり船で訓練を受けている9人に一度講話をしてみよう。」
ということで漁業の概要を説明する時間をいただくこととなり2015年7月1日に初めて漁業講話を行いました。

初めての刑務所訪問。
壁の中は重々しい緊張感に包まれエネルギーを吸い取られる感覚がありました。
でも受刑者たちは真剣に出所後に就職先を考えていることが伝わってきました。

こうしたことで始まった函館少年刑務所での取り組みですが、ありがたいことに年を追うごとに同行してくださる仲間が増えました。

コロナの前である2019年には初めて「漁業就労フォーラム」という形で漁業会社の方がブースを構え、受刑者と少人数で話をできる形式で開催したことにより、少しずつ内定に繋がるようになりました。

私たちはこれまで水産高校や任期制自衛官などに対し、話をする時間をいただいてきましたが、どこよりも多くも質問があり受刑者の就業への意欲を感じます。

会長も私も、彼らの「迷惑をかけた家族などのためにもきつい仕事でもしっかり働きたい。」という気持ちを繋ぐことに使命感を持ちましたが、それは参加してくれた船主さんも同じで、
「自分たちは人手不足で困っている。彼らを雇用することが社会貢献に繋がるのであればお互いに良いことで彼らの更生したいという気持ちを受入たい。」
と言ってくれています。

今回開催した漁業就労フォーラムはこれまでより規模を拡大し、漁業就業に興味を持つ受刑者192人、全国から集まった漁業関係者30人超の方に参加いただきました。
会場にいらした刑務官が言われていたのが
「普段、黙々と作業している受刑者が前のめりになり質問している姿はすごく新鮮です。 こうした機会をいただきありがとうございます。」とのこと。

少年北海丸の菅野船長からは、
「今年の船舶職員の訓練生はこれまでよりも上位級の4級海技士学科試験に10人全員が合格し、漁船への就業に意欲的です。」
との嬉しい報告もありました。

担当いただいた刑務官森田主任によると、この規模での就労フォーラムは他の業界では聞いたことがないそうです。

こうしたこともあり、これまで長い間、ボランティアで会長職を担い、漁師.jpの漁労長を務めてきた元漁師小坂会長に捧げられた感謝状を大変ありがたくお受けしました。

授賞に関し、私どもの取り組みに賛同いただいたすべての皆様に心から感謝申し上げます。

そして、服役期間を終え出所し、漁師になる方々に心からエールを送ります。

漁業人材デザイナー馬上敦子