4月15日、岸田総理大臣が衆議院補欠選挙の応援で訪問された和歌山市の雑賀崎漁港で起こった事件の際、爆発物を投げた男を取り押さえた漁師の行動が話題になっています。
危険な状況下、地元漁師の勇気ある行動により大きな事故にならずに済み本当によかったです。
漁師.jpで色々な場所で漁業のセミナーをするとき、「漁師の役割」をお話しています。
漁師の一番の仕事(役割)はもちろん魚を獲り国民への食糧の安定供給です。
ですが、それだけではなく、今の時代、魚の資源を守ること。そして海を綺麗にすること。各地でルールを定め漁獲量を調整したり、台風のあと、川から流れてきた流木やごみを集めています。
また、日本の沿岸津々浦々、人の住むところには漁村がありその漁村を守っていくことも漁師の大きな役割です。過疎化が進んだ漁村で存続が危ぶまれているところもありますが、そこを何とか守っているのが漁師たちであり、ある時は消防団として、ある時は祭りを盛り上げ、漁村とそこに根付く文化を守っています。
漁師.jpでは年に数回、任期制自衛官に漁師の話をする機会をいただいていますが、その際にザ昭和な元船乗りの我が会長が決まって話すことがあります。
「自衛官の皆様も日本を守ってくださってきましたが、実は漁師たちも国を守っています。
漁師は海のことをよく知っている。沖に出て見慣れない船がいればすぐに通報し、古くから密入国や密輸を防いできた。バルチック艦隊を一番最初に発見をしたのも宮古島の漁師たちなんです。」
今回の和歌山市の事件に限らず、4月7日には千葉県の富津漁港で海に転落した20代女性を救助した71歳と80歳の漁師さんのニュースも報道されていました。なかなか普通はこの年代の方が咄嗟に救助することは難しいように思います。
昨年5月に起きた知床半島沖で沈没した観光船の捜索には盛漁期にも関わらず地元の漁師たちが総出で捜索に協力し、「この海のことは俺らが一番わかっているから」と中には数ヶ月も協力していました。
今月宮古島周辺で消息を絶った陸上自衛隊のヘリコプターの捜索にも地元の漁師たちが連日協力していると報道されています。
2年前になりますがオーストラリア沖でマグロ漁をしていた第15福積丸(静岡県焼津市)が、沈没しかけているインドシア漁船の救助行ったニュースもありました。救助に向かった距離は330㎞。
人命を優先し荒れた海での救助は海の怖さを熟知し海と共存している漁師たちでなければできない行動であり世界の海でも行われています。
事故は当然ないことが一番ですが、このように色々な場面で社会的な役割を果たしている漁師という職業をお伝えしたく書かせていただきました。
常に危険と隣り合わせで、一度沖に出たら頼りは自分だけのサバイバルをしている漁師たちの咄嗟の行動力は日頃から養われたものなのではないかと思います。
応援する私たちとしては漁師にスポットが当たることは嬉しい反面、このような事件が二度と起こらないことを願っています。
漁業人材デザイナー馬上敦子