現役漁師へインタビュー

INTERVIEW

「いつか漁師になる」、夢を叶えて漁師に。

中井恭佑さん

(なかいきょうすけ)

三重県尾鷲市早田町

(みえけんおわせしはいだちょう)

三重県の若い漁師|中井恭佑さん

早田大敷(はいだおおしき)は
“待ちの漁業”

尾鷲市の早田漁港で「早田大敷」という会社で漁師をしている中井さん。 “大敷(おおしき)”とは、魚をとるために海の中に仕掛ける大型の定置網のこと。その網に魚が入ってくるのを待つ漁法で、“待ちの漁業”と言われています。 大敷ではサバ、アジ、ブリなどの魚を獲っていて、中井さんにお話を伺った日は(一匹あたり)3~4kgくらいのワラサを獲っていました。ワラサはちょっと小さいブリのこと。ブリは出世魚と言われる、成長によって呼び方が変わる魚です。体長60cmくらいがハマチ、80cm以上がブリ、ワラサはハマチとブリの仲間で、地域によってはメジロとも呼ばれています。 この日はワラサが1500~2000匹、約8トンも獲れたそう!自然に魚が入ってくるのを待つだけなので、環境にも優しい、持続可能な漁のひとつ」と定置網の良さを語ります。

漁師になったきっかけ

中井さんは子どもの頃から釣りが大好き。おじいさんに連れて行ってもらうのを毎回楽しみにしていて、中学校の卒業文集に書いた将来の夢も漁師だったといいます。 「いつか漁師になる」ということは決めていましたが、他にもやりたい仕事があったため、一度は別の仕事に就きました。その後漁師としての仕事を探しにハローワークへ。そこで目にとまったのは漁師になりたい人たちへ向けた情報を掲載した「漁師.jp」のパンフレット。30代でリーダーとして活躍する漁師のインタビュー記事が載っていて、「自分も30代で漁船のリーダーになりたい」という思いに駆られ、以前から漁業体験を行っていた三重県尾鷲市(おわせし)へ連絡したそう。早田漁港と隣町の漁港の2ヵ所で漁業体験をして「絶対この仕事をやりたい!」と、早田漁港で漁師になることを決めました。

リーダーになってやりたかったこと

中井さんは現場のトップ「漁労長(ぎょろうちょう)」を任されています。漁労長の下には魚監督、さらにその下にもいくつかの階層があるのだとか。夢だったリーダー「漁労長」。いつ抜擢(ばってき)されてもいいよう、必要な知識を蓄え、準備をして漁労長になってからは、みんなが働きやすいよう、業務改善に取り組みました。 漁師の仕事はその日の天候にも左右されるため、一日のスケジュールを立てにくいのですが、効率よく仕事ができるよう、月の工程表を作成。これにより誰かの指示待ちの状態がなくなり、自発的に作業する人が増えたそう。 また魚の鮮度を保つため、活け締めや神経締めも取り入れました。新鮮な状態を保つことで、魚の単価もアップ。活け締めや神経締めの技術は三重県内でもトップクラスだといいます。

大型定置網漁ならではの
楽しさ、おもしろさ

この日の集合時間は朝4時。漁へ出て(1時間~1時間半くらい)、また港へ戻ってきます。そこからは水揚げ作業。トラックに魚を積み込み、市場へ出荷します。1時間くらい休憩をはさんで、お昼12時ぐらいまで作業します。実質の作業時間は一般的なサラリーマンより短く、残業もありません。 「僕らの会社は7月末まででいったん漁が終わります。8月~9月10日頃までは、休漁期。その間、休暇をとるか働くかは選択制になっていて、僕は家族を養うためにも働く方を選びますが、休んで旅行へ行く人もいます。 うちで働く人の7~8割がIターンという他県から来た人。この40日間の長期休暇で実家に帰る人も多いですね」。 長期で休みがとれることにプラスして、大型定置網漁ならではの魅力があるという中井さん。 「魚が入るのを待つだけの漁なので、毎日何が入ってくるかわからないおもしろさがあります。マンボウやジンベイザメなど、水族館で見るような魚が入ってくることもあります」。 さらに大型定置網はチームワークが必要な漁。みんなで力を合わせて漁を行うところや、できないところを助け合い、サポートしながら漁を成し遂げるところが定置網の醍醐味(だいごみ)といいます。 中井さんが体験した1日最高売り上げは約1000万円。インタビューさせてもらった日は250万円くらいあったそう。「魚が網に入ってきて、それを売るだけでお金になる。海の豊かさに感謝しないといけないですね」。

漁師に興味のある10代や女性からの
問い合わせも増加中

「昔、漁船の乗組員は早田町出身者ばかりで構成されていましたが、高齢化で引退する人も多く、今では漁師に興味をもつ県外の若い人を募集しています」という中井さん。 10代の若者や女性からの問い合わせもあり、まったく違う仕事から漁師に転職する人も増えているのだとか。 漁労長として活躍する中井さんですが、肘を粉砕(ふんさい)骨折するという大けがをしたことも。「入院して手術しないといけなくて、みんなにも迷惑をかけました」。当時はショックも大きかったといいますが、周囲に助けられ、力を合わせて漁をする喜びを改めて感じた出来事でもあるといいます。 仕事のやりがいについて「魚がたくさん獲れたとき、みんなも笑顔になって、港に帰ったら、町の人たちもみんな笑顔で迎えてくれる。そういうところ。」と、素朴な言葉で語ります。 この仕事を絶やさないためにも後継者育成に力を注いでいて、「早田大敷」では女性も漁師として働くことが出来るよう、性別を問わず求人しています。 大変なことも多い漁師の仕事ですが、やる気と負けん気で乗り越えてきた中井さん。中井さんと同じように、熱意のある人材を募集しています。

動画でインタビューを見てみよう!

獲った魚を手にする若い男女の漁師
30代で率いる若き司令塔
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