INTERVIEW
遠藤勝信さん
(えんどうかつのぶ)
千葉県旭市足川
(ちばけんあさひしあしかわ)
女きょうだいの中で男一人だったため、半強制的に父親の跡を継いで漁師になった遠藤さん。当初は船酔いもひどく、「今日もまた船に乗るのか・・・」と、漁に出る前から船酔いするんじゃないかと思うと、嫌な気分になっていたそう。 そんなある日、父親から「他の人の船に乗って、修業してみては?」と薦められ、別の船に乗ることに。「今思うと、親の船に乗っていたときは、父親も一緒だから・・・という甘えがあったと思う」と当時を振り返る遠藤さん。 他の人の船で普段とは違う緊張感の中、仕事をすることで船酔いも自然と治まったそう。 「何がきっかけかは分からないのですが、船酔いを克服するまで約2年かかりました」。 この経験がきっかけで、漁師としての自覚も芽生え、仕事の楽しさも感じるようになったといいます。
漁師としてやりがいを感じるのは、やはり「魚がたくさん獲れたとき」・・・と思いきや、そうした結果ではなく、自然と向き合う過程にも魅力があるといいます。 「魚がたくさん獲れたら『よかった』、『ホッとした』と思う反面、『本当にこれでいいのか?(このやり方でよかったか?)』と自問自答します。 同じタイミング、同じ瞬間って絶対ないじゃないですか?『明日も今日と同じ漁をしてください』と言われても絶対出来ない。海水温や潮の流れ、水色、風向き、自身の体調もすべて違う。似たような日はあるにしても、ドンピシャ同じ日はない。魚がたくさん獲れた、獲れない、の結果を重視しがちですが、日々変わっていく自然と向き合うことで何かを得ることができるのが漁師の魅力。常に学びのある、奥の深い仕事だと感じています。」
1年前に新たな水産加工施設を立ち上げた遠藤さん。「この施設を立ち上げたのは漁師としての経験があったから。ここを自分の思い描くカタチにするにはどうすればいいか、常に考えています」と話すその顔は、充実感に溢れています。 理想を実現するためにも、行動あるのみ!「失敗しても、失敗から学べばいい」「失敗をバネにして成長すればいい」と前向きにチャレンジを続けています。 「人生には壁がある。その壁をどうやって乗り越えるか。これまでも様々な壁を乗り越えてきたから今の自分がある」と、困難から逃げたり、あきらめたりする様子はありません。 長男として家業を継いで漁師になり、船酔いにも苦しみ、これまで幾度(いくど)となく様々な壁にぶつかりながらも、大きな夢に向って確実に歩み進める遠藤さん。どんなことにもへこたれない逞(たくま)しさは、自然と対峙(たいじ)してきた漁師ならではの強さなのかもしれません。 このように自分に厳しい遠藤さんですが、スタッフは「同じ釜の飯を食べる仲間であり、家族」といい、大事な存在といいます。 漁師の仕事は危険を伴う場面もあり、仕事中は強い口調になることもありますが、「一人でできる仕事は限られている。一人より二人、二人より三人。みんなの力をあわせれば、できる仕事が変わってくる。みんなの力がないと成長できない。」とチームワークを大切に、漁師という仕事に誇りを持って向き合っています。