現役漁師へインタビュー

INTERVIEW

ITを取り入れた養殖で、漁業の未来を切り開く。

西村宗伯さん

(にしむらむねのり)

三重県度会郡大紀町

(みえけんわたらいぐんたいきちょう)

養殖でITを活用する西村宗伯さん

漁師になったきっかけ

西村さんの父親も漁師だったので、“漁師”という仕事は身近な職業だったといいます。しかし「将来は漁師になろう」と思っていたわけではなく、学校を卒業してからは市場で働いていたそう。漁師になったきっかけは、おじさんがリタイアして人手が足りなくなったから。今はマダイを中心に、マハタ、シマアジなどの養殖を行っています。 三重県は全国有数の養殖マダイの生産地。養殖とは、人工的に魚を育てることです。漁に行って魚を獲るのとは違って、生け簀(いけす)で稚魚(魚の赤ちゃん)を育て、大きくなったら出荷するため、品質を保ち、一定量を常に提供することができます。 養殖のメリットについて、西村さんは「天然の魚は旬(しゅん)のときはすごく美味しいんですが、夏場や脂がのっていない時期など、味にバラツキがある。養殖だと餌をコントロールすることである程度安定して美味しい魚を提供することができます」と話します。

美味しい魚を育てるために、
心掛けていること

美味しい魚を育てるためには魚が快適に過ごせる環境整備が大切です。魚が成長して大きくなると、魚同士がぶつかりあって、傷ついてしまうことがあるそう。そのため生け簀の密度が高くなりすぎないよう、なるべく早く「分養(分けて育てること)」しているといいます。また、病気など何かしら異常があったときには素早く対応し、魚たちが元気に育つよう、気を配っています。 仕事を始めるのは朝6時~7時頃。その日の出荷分を獲り、その後網を変えるなどの作業を行い、餌やりが終わると陸上で網の補修をします。仕事が終わるのは午後3時頃。そこからは自由時間ですが、「朝が早いので夜8時、9時くらいには寝ます。早く布団に入って眠れるのは幸せですよ(笑)」と一生懸命働いてぐっすり眠るのが西村さんのルーティン。 「海の美しさを身近に感じ、おいしい魚を味わえるのも漁師のいいところ。刺し網で伊勢エビを獲りに行ったりすることもあります」と、養殖業の魅力を語ります。

地道な仕事をコツコツ出来る人、募集!

養殖で一番時間をかけているのは、餌やりと網の補修。地道な仕事をコツコツ出来る人が養殖業に向いているという西村さん。最近では新しい技術の導入も進んでいるため、「IT技術を使いこなせる人も向いているかもしれません」と話します。 給料は「サラリーマンより少し多いくらい」を目指していて、「早く仕事に慣れれば、その分給料もあがっていく」といいます。 これまで一番嬉しかったことは、色や味など西村さんが理想とする魚を育てることができ、ブランド魚として販売できたこと。赤潮や台風など、環境災害に見舞われる度、気が気じゃないそうですが、やりがいを感じているといいます。

ITを取り入れた養殖
未来の漁業の土台づくりに貢献

西村さんは魚の計測をIT化したり、作業船を使って重労働の軽減を図るなど、生産性を高めるための工夫を行うと同時に、自分たちが育てた魚を自分たちで加工し、販売する6次産業化にも力を入れています。そうすることで長栄丸のファンを増やし、美味しい魚を直接届けたいと考えています。 また地元のIT企業と連携し、水上ドローンを使った実験にも協力しています。 「ITと漁業はかけ離れたものと思っていましたが、ドローンを使って無人で餌やりが出来たり、将来的には漁業もIT化が進んでいくと思います」。そうした新しい技術を柔軟に取り入れ、使いこなすことで新たな漁業人材を確保したい考えです。 「もう年なので、正直、ITに関してはあんまり分かりませんが、若い人にも興味を持ってもらえるよう、積極的に取り入れていきたいと思っています」と未来への展望を語りました。

動画でインタビューを見てみよう!

獲った魚を手にする若い男女の漁師
IT×漁業-育てるを極めた男