現役漁師へインタビュー

INTERVIEW

この素晴らしき海女文化を守り伝えたい

海女(あま)& フォトグラファー

大野愛子さん

(おおのあいこ)

三重県鳥羽市石鏡町

(みえけんとばしいじかちょう)

三重県の海女と写真家を兼業する大野愛子さん

海女(あま)になったきっかけ

大野さんは東京生まれ、東京育ち。こどもの頃から海が大好きで、大学でも海について勉強したんだって。将来は「海にかかわる仕事がしたい」と思っていたけど、お父さんがカメラマンだったから、「写真もやりたい」って思っていたんだそう。 海女になったきっかけは、石鏡町の豊かな資源を活かし、まちを活性化する地域おこし協力隊(※)の募集をインターネットで見つけたから。海女として働きながら、地域のお祭りや地元の食材を使った「海女料理教室」など、海と共に暮らす人たちの様子を発信する仕事ができると知って、夢だった「海にかかわる仕事」と「写真の仕事」の両方出来ると思い、応募したそうです。 ※地域おこし協力隊…過疎や高齢化の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、地域での生活や地域社会貢献に意欲のある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度

石鏡町の海はとってもおいしそう?!

海が大好きな大野さん。海外へも行き、いろいろな海に潜ったそうですが、石鏡町の海はこれまで潜った海と全然違います。「森みたいに海藻が生い茂っていて、そこを行き交う魚や貝はどれもとってもおいしそう」といいます。今まで見てきた海とはまったく違う光景に、とってもワクワクするのだとか。 海女漁へ出る日は朝7時に海女小屋に集合して、8時半過ぎくらいから海に潜ります。1回に潜る時間は75分。1時間休憩したら、もう一回潜るので、漁をするのは1日2回。 午後からは採ったものを市場へ持っていって、計量します。それが終わればその日の仕事は終了です。 「午後3時前くらいには終わるので、その後、フォトグラファーの仕事をしていましたが、最近は漁に出た日は何もしないって決めています。夕方5時ぐらいにはご飯食べて、次の日に備えて夜8時くらいには寝ます」。

海女の働き方は時代の最先端
~海女という仕事の魅力~

海女は水中で作業するため、体に圧力がかかり、体力を消耗する大変な仕事です。またアワビやサザエなど、獲りすぎて無くなってしまわないよう、漁の期間は限られています。大野さんが漁をするのも1週間のうち3、4日くらい。収入は1日10万円という日もあれば、2000円だった日も。自然が相手なので、思うように稼げない日がありますが、今は東京で働いていたときよりも稼げるようになったといいます。 フレキシブルに「自由な働き方ができるのが魅力的」という大野さん。 週の半分は休みですが、漁に出ない日は何をしてもいいというわけではなく、海に潜るための体作りや健康管理を最優先に考えています。 例えばちょっと体調が悪い時、「陸の上では平気でも、海に入るとダメージをくらうこともある」ので、普段から自分自身を優しく気遣うようになったそう。 「水族館行かなくてもウミガメと出会えることも。岩陰にサメがいたのはビックリしましたが、魚とふれあえるところも海女のいいところです」と、海女の仕事にやりがいと楽しさを感じています。

ベテラン海女は86歳!
この素晴らしき海女文化を守り伝えたい

大野さんが暮らす石鏡町の海女は、中学校を卒業してからずっと海女をしている海女歴50年、60年も多く、最高齢は86歳!平均年齢70歳以上だそう。 そんな“海女一筋”という人もいれば、大野さんのように都会から移住してきた人や、石鏡町に嫁いでから海女を始めた人もいます。 「東京にいた頃はアワビなんてお寿司屋さんで一切れ食べたことがある程度で、丸々一個食べたことなんてなかったし、東京で食べたらスゴい値段すると思うんです。それが石鏡町だと採れたてをその場で食べることができる」という食の豊かさに加えて、大野さんが何より気に入っているのは、「誰かに言われてやる仕事ではない」こと。海女はみんな、一人社長(個人でビジネスをしている人)。すべて自分で決断して、成果を出すという働き方が自分にあっているといいます。 大好きな海女の仕事をもっとたくさんの人に知ってもらおうと、最近では動画投稿などを行い、海外向けのPRに力を入れている大野さん。 年々減り続けている海女ですが、「海外の人の目にとまり、評価が高まれば国内の意識も変わるかもしれない。海女に興味を示し、海女になりたいという人も増えるかも・・・」と希望を託しています。 「海女のおもしろさはやってみないとわからない。機会があればぜひ挑戦をしてほしい」。地域に根付いた海女文化を守り、伝えていきたいという大野さん。この町に海女がいる風景を絶やさないためにも、フォトグラファーとしての腕をいかし、地域の暮らしを多くの人に伝えています。

動画でインタビューを見てみよう!

獲った魚を手にする若い男女の漁師
世界に発信する海女兼写真家
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